「所有感」のある電子書籍を考えてみた。

■現状の電子書籍は所有感が皆無

電子書籍というと最近はこのニュースが話題でしたね。

この電子の販売額が紙を越えたというニュースが話題になりましたが、実際私(スタッフ)も、本は最近ほとんど電子で買ってます。なので個人的な実感としても数字通りな感じですね。(なお、電子は過去の名作を含めた既巻の売り上げが大きいので、作家さんの立場だと新刊の販売額が知りたいところでしょうね)

このように、どんどん存在感が増してきた電子書籍ですが、一つ気になるところをあげるとすると、やっぱり所有感がないところです。Twitterで「電子書籍  所有」で検索すると、所有感や所有権がないことが不満って声も多く見られます。

なぜかというと電子書籍というものはKindleにせよなんにせよ、基本的には読める権利を買っているだけなんです。電子データを所有しているわけではありません。

極端な話、データを配信しているプラットフォーム側がサービスを停止したり、一部書籍のようにプラットフォーム側で有害書籍と判定されてしまうと、端末にダウンロードしたデータを消したが最後読めなくなってしまいます。あと当然ながら配信サービスを別の会社に変えたら、今まで買った電子書籍も読めなくなってしまうと。

 

例えば漫画アプリも今は数多く存在しますが、そのアプリ上で単行本を買ったら、そのアプリでしか読めないってやっぱりなんかおかしいですよね?買う方は本来、Amazonやkoboやアプリとかのプラットフォームを意識していません。あくまで買うのはコンテンツなんですから、ここに関して言うとありえないほどの不便さです。

「所有」という言葉をどう定義するのかにもよりますが、現状の電子書籍のシステムでも普通に使っている分には「いつでも好きな時に利用できる」状態ですし、その意味では所有してる状況とほとんど同じです。また、スマホで漫画データを大量に保持しておくのも現実的ではないので、必要な時に一時ダウンロードするのにも納得性のあるサービスであるのですが、なんだかやっぱり紙と違ってそれでも「所有感」を感じないのが電子書籍なんです。

■音楽データのようなダウンロード形式なら所有感が出る?

音楽データなんかはmp3のダウンロード販売なので、データも手元にありますし、そこそこ所有感があります。ただ、この方式には問題があってダウンロード販売で買うとモノの価値が下がる(ように感じる)のです。

これはどういうことかというと、実に単純な話ですがダウンロードで購入したものは売ることができないということです。

本来、対価を払って所有権を取得したものは、売るのも所有者の自由なのですが、ダウンロード販売はデータの価値に毀損がないのでそうはいかないと。

そう、ダウンロード販売は購入者に売る権利がないのです。

売れないのが当たり前と思うかもしれません。けど、本来は家だって、CDだって、本だって、買った人は所有権があるので同時に売る権利も持ってるのに!売却できない以上「ダウンロード販売で買うことはモノの価値が下がる」ように感じられてしまうのです。(仕組みとして悪いと言っているわけではありません。あくまで「価値」の話)

私自身ダウンロード販売のほうが便利なので、大抵そっちを選択するのですが、このような自由度の低さがやっぱり本当の意味で所有ではないな、と感じてしまうのです。

 

■ブロックチェーンで電子書籍を売るのはどうだろう?

ビットコインを持っている人はわかると思うのですが、ビットコインはデータにもかかわらずかなり所有感あります。それはやはり、自由に使えるだけでなく、売ることもできるし、他人にあげることもできるからではないでしょうか。私の考える所有権という意味でもバッチリな感じがします。

ブロックチェーン技術というものは、ビットコインでかなり有名になったこともあり仮想通貨のイメージが強いと思いますが、別に通貨に限定した技術ではありません。

きっとブロックチェーンの仕組みで電子書籍を配るのも可能なはず。

そして、ブロックチェーンで電子書籍を売ることは、もしかしたら作家も読者もwin-winな関係を築ける仕組みができるのではと考えるのです。

 

■トークン1単位 = 1冊?

まず、ブロックチェーンで電子書籍を売る仕組みですが、発行するトークン1単位を単行本1冊みたいな感じで発行できないかと考えています。(ここで言うトークンとはブロックチェーンから発行される仮想通貨的なものと思ってください)

具体的な例をあげるとすれば、、、
仮に作家が新作の単行本トークンを2万単位発行したとして、この単行本トークンをとりあえず1単位=300円で売りに出したとします。この時、このトークンの価値は1トークン300円となり、読者はこの1トークンを入手すれば、その単行本を読むことができます。

で、これまでの電子書籍と異なる点は、この単行本トークンというものは作家だけでなく、読者だって売れることです。

読者は当然の権利として、本を読んで飽きたり不要になったら売ってもいいのです!

そして、ここからがこれまでのブロックチェーンにもない独自の特徴になるのですが、単行本トークンを売る(所有権の移転)時にデータそのものではなく、データの金銭的価値が毀損する仕組みを実装しておくのです。

まず単行本トークンにはコンテンツホルダーとして作家を登録しておきます。そして、例えば読者AさんがBさんに所有権を移動させたとき、価値の10%がコンテンツホルダーの作家に戻るなんてどうでしょう?(このパーセンテージはコンテンツホルダーが自由に設定できる)

この説明だとちょっとわかりずらいですかね。時系列で説明すると下記のような感じです。

  1.  作家が1トークン300円で単行本トークンを売却
  2. Aさんが300円で1トークン購入。トークンを所有している間は電子書籍を読むことができる。
  3. Aさんはその後この単行本トークンを売りに出す。Bさんがこれを購入。
  4. Bさんはこの時点の1トークンの価値である、300円分をAさんに支払う
  5. 価値の10%がコンテンツホルダーに戻るので、実際にAさんが単行本トークンの売却で手に入れるのは270円分
  6. 所有権の移転によってコンテンツホルダー(作者)には30円分が戻りで入る

実際には取引所の取り分もあるので、コンテンツホルダーの取り分はもっと減るかもしれません、またトークンであるため価値に変動が出ることも考えられます。ただ、この仕組みだといくら転売されても作者にお金が入りますし、読者も正しく所有権を持った形で電子書籍を入手/売却することができます。

これから本はどんどん電子書籍で購入する時代です。これなら所有権もありつつ、データそのものには毀損がないので売る時はその時のトークンの価格で売りに出せるし、それでいて作家にもお金が入るし、結構いい感じだと思うのですが、どうでしょう?

なお、所有権の移転時に発生する戻しのお金は一次発行者であるコンテンツホルダーに戻すだけに限定しているので、ネズミ講やマルチのようなピラミッド型じゃないし、法的にも問題ない..はず。

 

■漫画をトークン化することで、新しい価値がでる?

先ほどの例ですと、とりあえず単行本トークンを2万発行と書きましたが、それだと発行部数的に読みたい人に行き渡らず数が足りなくなるケースが出てきます。また、作家側としても2万発行しても、それを全て売らなくてもいいわけです。

そうなると人気作であればあるほど単行本トークンの価値があがってくるはずです。当初1単行本トークン=300円だったものが600円になるかもしれません。

その時に重版的な形で、コンテンツホルダーはトークンを分割できます。1:2の分割を実施すれば、1トークン=600円だったものが、300円になりますが、すでに1トークン持っていた人は、トークンが2単位になります。これは単行本を1冊所有している人は、単行本が2冊になったと思っていいです。もっと価値が上がるのを待つ人もいれば、同じ本を2冊持っていても意味がないと考える人はここで1冊を売ったりもするでしょう。

考えられるケースとしては単行本トークンを2万発行しても、コンテンツホルダーは半分は自分で保持したりするでしょう。人気が出たら分割して売ったり、すでに販売済みの本も流動性があがることで、コンテンツホルダーには通常の紙の重版のように様々な恩恵があるはずです。

また、読者にとっても面白いのが将来的に価値があがりそうな単行本トークンは、資産として保持するとか、最初から複数トークン買っておくとか、本を読むだけでなく投資(or投機?)的な楽しみ方もできることです。のちのちヒットを飛ばしそうな作家の本を新人の時に保有しておくなどの投機?的なことも可能かと。

これって今までの電子書籍には絶対なかった新しい価値が付加されたように思えませんか?

 

■まとめ

読者のメリット
・買った電子書籍を売れる
・電子書籍でも所有感を持てる
・投資(or投機?)的な楽しみ方ができる
・海外の配信会社の都合で絶版にならない
・買う場所(プラットフォーム)を気にしなくてよい
・配信会社を変えると本が読めなくなるとかの不都合がなくなる

作家のメリット
・自分が関わらないところで単行本の所有権が移動してもお金が入る
・単行本トークン数を自分で制御できるので、重版するも、わざと分割しないで限定版にするなどの流動性も作家の自由
・投資(or投機?)的な楽しみ方ができる
・海外の配信会社の都合で絶版にならない

 

とまぁ、勢いで書いたので「こういう時どうなの?」というアラというか、もう「根本的にダメダメじゃん」的なところもあるかもしれませんが、そこはご容赦というか、むしろブロックチェーンで本を売るならこうしたらいいんじゃない?といったご意見を頂けると嬉しです。

ちなみにKindle Unlimitedの読み放題をみてると漫画の定額読み放題はまだまだ課題はありそうですが、これからきっと定額制サービスも増えてくるんでしょうね。ただ、あまり数を読まない人にとっては定額制は逆に割高だったり、定額制は掛け捨て的な面もあるのでサービスから抜けると何も残らなくて不満に思う人もいるでしょう。そのあたりのニーズや所有感を満足させる形とかでブロックチェーンでの書籍販売とかが広まったら面白いかなあと思っています。

(追記)このエントリを書き終わった後に、有名なブロガーさんが近い話をしているのを見てしまって、、、。コンテンツホルダーへの戻しやトークンの分割まで考えた感じではないので細かなところは違うのですが、ブロックチェーンで出版という部分は完全に丸かぶりだったので記事を公開するのもちょっと躊躇したり。まぁ、せっかく書いたのでこうして公開しています。やはり色々な人が近いシステムを考えてそうだし、面白そうなのでブロックチェーンでの出版は本当に実現するといいなぁ。

 

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